西洋医学には無い漢方の視点
【漢方には東洋医学という理論があります】
西洋医学とは、異なった理論体系で、細かい理論ではありませんが、病気を総合的に有機的に捉えています。
生命体はもともと有機的で総合的なものですので、東洋の理論のほうがより合致しています。
例えば西洋医学では不眠は脳の病気ですから、ハルシオンなどの睡眠導入剤を用います。
これを漢方で解釈すると、精神と関係している内臓との関連を疑います。
つまり、肝(臓)心(臓)が消耗・疲れているのではないかと疑います。そしてその治療には、例えば、抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ)を用います。
これは肝のバランスを取り、肝の興奮を抑えるということにより、心を落ち着かせようというものです。
飲んだからといって眠くなるのではなく、自然な形で睡眠に入るものです。
アトピー性皮膚炎も、漢方はその人の体のアンバランスを治すことにより、その人自身の力で、治癒させるものです。それゆえ時間はかかります。
しかし、体全体のバランスがとれてきますので、他の思わぬ効用も出てきます。
例えば、生理不順・生理痛のひどい人が、アトピー性皮膚炎が治る頃には生理不順等も共に良くなっているということがあります。
あるいは不妊の問題も抱えていた人が、アトピーが改善するにつれ、期せずして妊娠する例です。これらは当初期待していなかった事柄です。
漢方は、アトピー性皮膚炎だけでなく、体全体を改善していきますので当然といえば当然のことなのです。
アトピー性皮膚炎も、
漢方では、その人の体のアンバランスを治すことにより、その人自身の力で、治癒させるものです。
それゆえ時間はかかります。しかし、体全体のバランスがとれてきますので、他の思わぬ効用も出てきます。
アトピーのような慢性疾患を治そうとして、漢方薬を服用していただいた方の中には、いろいろな理由によりあまり改善しなかった方もいらっしゃいます。
その理由の主なものは、漢方薬に過度な期待を寄せ、すぐに効果が出ると思っていること、
そのため、3ヶ月、4ヶ月間、漢方薬服用の継続ができないためです。また、生活習慣を改めず、お酒やタバコ、お菓子類の摂取のコントロールができないこともその理由です。
【漢方でアトピーは改善するのか】
さて、アトピーは漢方で本当に良くなるのでしょうか。完治するのでしょうか。完治とはいかずとも改善し、日常の生活に支障ない程度まで回復するのでしょうか。
答えはYesです。Yesと言っても夢のように、すぐに100%効く漢方薬はありません。
アトピーの期間が長いほど、体質の偏りが大きくなっていますので、漢方薬を服用する期間は長くなります。
その時その時の症状体質に合わせて漢方薬の処方を検討し、修正することにより、体質はしだいしだいに改善されアトピーから一歩一歩脱却していきます。
表面上すぐには良くなりませんが、ステロイドのように表面上をとりつくろうわけではなく、体質を変えていくわけですから、漢方薬の服用を継続することにより、
アトピー体質から脱却できるようになり、皮膚の状態も良くなってきます。
【漢方の復活・西洋医学との相違】
西洋医学全盛の時代に漢方が生きながらえてきたのは、漢方にそれなりの魅力があり、一部の人たちには、むしろ必要だったのです。
それは西洋医学が、一つの臓器の異常をその臓器の異常としてみるのに対して、漢方は体全体の中で有機的にその異常を捕え対処する方法を取っています。
言い換えると、西洋医学は分析的・局部的・外科的・攻撃的であるのに対し、漢方は有機的・全体的・内科的・支援的です。
それぞれ特徴を持っていますので、理に合った使い方をすればいいと思っています。例えば、
肺炎などの細菌による感染症にはひとまず抗生物質で菌を殺し、次に、又は同時に、感染した体力の無さ(免疫力の低下)については、
漢方で体質強化を行うのが望ましいと思います。
肺炎自体にも漢方で対処できますが、細菌の感染阻止については漢方は弱いと言わざる得ません。
【漢方と免疫】
漢方の得意なところは免疫系を正常にもって行くことです。漢方における体質改善とは、免疫力の賦活に関することと考えています。
例えば、ガンは何らかの形で、正常細胞の遺伝子が変性を受け、無限に細胞分裂することにより起こります。
このガン化は免疫系が正常ならば、ガン化した細胞を見つけ出し、ガン化した細胞を破壊し、ガンになることを防いでくれます。
免疫系が弱く、ガン化した一つの細胞を見つけ出せないと、がん化した細胞は分裂増殖し、小さな塊りになって腫瘍になっていきます。
漢方にはいろいろな処方がありますが、基本的には免疫系を正常に持っていくことです。抗ガン剤でガンをたたくより、自分の免疫系でガンを破壊するほうが、
どんなにか体にやさしいでしょう。
ただ、漢方は服用してすぐ効果が出るものでもありませんので、西洋薬の併用も止むを得ないと考えています。
中心にあるのは自分の体を自分の力で活性化させることです。
漢方はその手助けをします。免疫の低下はガンや感染症を引き起こします。
【アトピーと指標】
では、免疫の亢進・異常なたかまりはどうなるのでしょうか。関節リュウマチや膠原病それからアレルギー性疾患が引き起こされます。
アレルギーの中には喘息・アトピー性皮膚炎があります。
喘息もアトピー性皮膚炎も根っこは同じと考えています。
アトピー性皮膚炎を取り上げると、アトピー性皮膚炎の原因・病理の決定的なものは今のところないと思われます。
一つの考え方としてアレルギー反応の抗原と抗体に着目し、アトピー性皮膚炎を患っている方は、
その抗原に特異的に結合する特異的IgE抗体や、いろいろな抗原と結合する非特異的IgE抗体の量が非常に多いということがいえます。
それは正常値(250)に比べて一桁、まれには二桁も多いことがあります。
ただアトピー性皮膚炎の方が全員その値が高いかといえばそうでもなく、250前後の人でもアトピー性皮膚炎の症状を示している方もあります
。例外もかなりあるのですが、その人個人にとっては良い指標になります。例えば非特異的IgE抗体の値3000の人が2600になれば改善していることになります。
その値が250でアトピー性皮膚炎の方でも240になれば改善していることになります。
漢方でよく体質改善といわれますが、例えば非特異的IgE抗体の値が改善していくことも一つの体質改善を表しているといえます。
漢方でも指標があった方が、客観性が増しより体質改善の実感が増します。
【アトピーと内臓との関係】
アトピー性皮膚炎を漢方の立場で見ると、次のようになります。
漢方では人間の体を、陰の臓として肝・心・脾・肺・腎、陽の臓(腑)として胆・小腸・胃・大腸・膀胱に分けております。西洋医学と同じ名称もありますが、
概念は一部共通のところもありますが、異なったものです。
漢方から見ると、脾と腎が弱く、また皮膚との関連が強い肺も、それからその肺との関連のある大腸にも異常がある人が多いようです。
それはアトピー性皮膚炎の人は便秘症が多いことからもうかがえます。
漢方の腎は先天的なエネルーギー源を貯蔵している物と考えられ、昨今の環境の悪さから、両親自身の虚弱さ、
胎児の際の母親からのエネルギー供給の少なさによるものです。環境とは、大気・飲食物・乗り物・電磁波つまり文明がもたらした物も含みます。
胎児にとっては羊水・母親からの血液リンパ液です。母体を通してくる音・電磁波も環境の一つです。大気は排気ガスで汚れダイオキシンによる悪影響も進んでいます。
食物も化学物質・ホルモン剤がはいっており、自然界全体が汚染されてきています。
ダイオキシン・DDT・ビスフェノールは環境ホルモンと言われ、性ホルモンとして体内で働き雌雄の性別に混乱が生じてきています。
そのような悪い環境の中で健康的に生きて行くことは大変です。
【アトピーは漢方で改善する】
では、漢方ではアトピー性皮膚炎を治癒または改善できるでしょうか。
漢方ではアトピー性皮膚炎の病理を湿熱が過剰に体内に溜まっており、このアンバランスを取ってやること、それから弱っている内臓を補強し、
悪環境に打ち勝つ力をつけてやることにより改善できるものです。同じアトピー性皮膚炎と言えども、
それぞれの体質には違いがあり、湿熱の度合いも異なることから、個人個人によって処方も異なってきます。
薬局で作れる漢方製剤は194処方あり、その一つの処方またはそれらの組み合わせにより対処することが可能です。
その人の現在の状況体質は、漢方では観ること・声等を聞くこと・さまざまなことを質問すること・触れることにより、
さまざまな病態に関する情報を得ることができます。その中で、食欲・便通・小便等さまざまな自覚症状を質問すること・舌の状態を観察すること・脈を取ることが重要です。