アトピー性皮膚炎

さて、アトピーは漢方で本当に良くなるのでしょうか。完治するのでしょうか。完治とはいかずとも改善し、日常の生活に支障ない程度まで回復するのでしょうか。
答えはYesです。Yesと言っても夢のように、すぐに100%効く漢方薬はありません。
アトピーの期間が長いほど、体質の偏りが大きくなっていますので、漢方薬を服用する期間は長くなります。その時その時の症状体質に合わせて漢方薬の処方を検討し、修正することにより、体質はしだいしだいに改善されアトピーから一歩一歩脱却していきます。表面上すぐには良くなりませんが、ステロイドのように表面上をとりつくろうわけではなく、体質を変えていくわけですから、漢方薬の服用を継続することにより、アトピー体質から脱却できるようになり、皮膚の状態も良くなってきます。
漢方の初歩を説明します。アトピーが少なくとも改善していくことを確信してください。
いわゆる漢方は中国で集大成され、インド医学のアーユルベーダも含め、中国各地の風土で生まれた按摩,灸,鍼,薬草の知識に、古代中国からの思想である陰陽五行説を基礎として、紀元前後に、「黄帝内経素問」「黄帝内経霊枢」続いて「傷寒雑病論」が世に出てきました。
日本では奈良平安時代にはむしろ一貫した教育システムがあり、大宝律令に定められた医疾令に基づいて医事教育を行っていたようです。
それから下って鎌倉・江戸中期までは一貫した国の教育システムはなく、私塾の形で行われていました。そのような中、漢方に流派が生まれました。その一つが曲瀬道三(安土桃山時代)の「後世方派」、名古屋玄医(江戸時代)から吉益東洞(江戸時代)等の「古方派」、後世方と古方とを折衷した浅田宗伯(江戸時代)等の「折衷派」があります。近代・現代に至っては古方派を発展させた和田啓十郎・湯本求真・大塚敬節、同様に後世派を発展させた森道伯・矢数道明、折衷派から細野史郎・柴田良治等の各先生がおられます。
江戸時代までは私塾の形でも漢方が日本の医学でした。西洋医学は蘭方と言われていました。 明治時代になると、政府はドイツ医学を取り入れ漢方を排斥する政策を取りいれ、漢方は凋落していきました。
それは漢方ブームと言われる今でも続き、本当の表舞台にはたっていません。決して正式な医学ではないのです。 医師国家試験に漢方の科目はありません(2006年?頃に医学部で東洋医学が必須科目になったようです。いずれ、国家試験にも出題され、若い医師の多くが漢方に対する考えが変わっ
てくるようになるかもしれません)。薬剤師国家試験についても一部生薬学を除くと同様です。
西洋医学全盛の時代に漢方が生きながらえてきたのは、漢方にそれなりの魅力があり、一部の人たちには、むしろ必要だったのです。
それは西洋医学が、一つの臓器の異常をその臓器の異常としてみるのに対して、漢方は体全体の中で有機的にその異常を捕え対処する方法を取っています。言い換えると、西洋医学は分析的・局部的・外科的・攻撃的であるのに対し、漢方は有機的・全体的・内科的・支援的です。
それぞれ特徴を持っていますので、理に合った使い方をすればいいと思っています。例えば、肺炎などの細菌による感染症にはひとまず抗生物質で菌を殺し、次に、又は同時に、感染した体力の無さ(免疫力の低下)については、漢方で体質強化を行うのが望ましいと思います。
肺炎自体にも漢方で対処できますが、細菌の感染阻止については漢方は弱いと言わざる得ません。
漢方の得意なところは免疫系を正常にもって行くことです。漢方における体質改善とは、免疫力の賦活に関することと考えています。例えば、ガンは何らかの形で、正常細胞の遺伝子が変性を受け、無限に細胞分裂することにより起こります。このガン化は免疫系が正常ならば、ガン化した細胞を見つけ出し、ガン化した細胞を破壊し、ガンになることを防いでくれます。
免疫系が弱く、ガン化した一つの細胞を見つけ出せないと、がん化した細胞は分裂増殖し、小さな塊りになって腫瘍になっていきます。
漢方にはいろいろな処方がありますが、基本的には免疫系を正常に持っていくことです。抗ガン剤でガンをたたくより、自分の免疫系でガンを破壊するほうが、どんなにか体にやさしいでしょう。
ただ、漢方は服用してすぐ効果が出るものでもありませんので、西洋薬の併用も止むを得ないと考えています。中心にあるのは自分の体を自分の力で活性化させることです。
漢方はその手助けをします。免疫の低下はガンや感染症を引き起こします。
では、免疫の亢進・異常なたかまりはどうなるのでしょうか。関節リュウマチや膠原病それからアレルギー性疾患が引き起こされます。アレルギーの中には喘息・アトピー性皮膚炎があります。
喘息もアトピー性皮膚炎も根っこは同じと考えています。
アトピー性皮膚炎を取り上げると、アトピー性皮膚炎の原因・病理の決定的なものは今のところないと思われます。
一つの考え方としてアレルギー反応の抗原と抗体に着目し、アトピー性皮膚炎を患っている方は、その抗原に特異的に結合する特異的IgE抗体や、いろいろな抗原と結合する非特異的IgE抗体の量が非常に多いということがいえます。それは正常値(250)に比べて一桁、まれには二桁も多いことがあります。
ただアトピー性皮膚炎の方が全員その値が高いかといえばそうでもなく、250前後の人でもアトピー性皮膚炎の症状を示している方もあります。例外もかなりあるのですが、その人個人にとっては良い指標になります。例えば非特異的IgE抗体の値3000の人が2600になれば改善していることになります。その値が250でアトピー性皮膚炎の方でも245になれば改善していることになります。
漢方でよく体質改善といわれますが、例えば非特異的IgE抗体の値が改善していくことも一つの体質改善を表しているといえます。漢方でも指標があった方が、客観性が増しより体質改善の実感が増します。
確かに、けがによる傷や火傷は皮膚そのものの病気と言えますが、尋常性乾癬・紫斑・紅斑・主婦湿疹・アトピー性皮膚炎は、皮膚病として考えるより内臓のアンバランスから来ていると考えた方が治療効果も上がります。症状は皮膚に現れていますが、その根本原因は内臓・血液・リンパ液・神経・ホルモンの異常、アンバランスにあります。
症状が出ている個所がその病の原因ではないのです。例えば黄疸が皮膚に出ていてもそれを皮膚病とはせず、肝臓・胆のうの病気と見るのと同様です。黄疸を治すには肝臓を治療する必要があります。
アトピー性皮膚炎も皮膚そのものを対象にしても治療効果は薄く、内臓のアンバランスに目を向ける必要があります。
つまり皮膚に対して、その皮膚の局部に抗アレルギー剤・坑ヒスタミン剤・ステロイド軟膏(副腎皮質ホルモン)を塗ると、その局部は一時的に改善します。しかしアンバランスそのものは是正されていませんので、ステロイド軟膏等を止めると元の状態になってしまいます。ステロイドの場合、その使用が長期にわたると、副腎の萎縮が起こります。そのためステロイドを自分で出す能力が低下することになり、リバウンドという形で前よりも更に悪い状態になってしまうことがあります。それが恐いため、ステロイドからの離脱を決意し実行することは、なかなか困難です。
アトピー性皮膚炎を漢方の立場で見ると、次のようになります。
漢方では人間の体を、陰の臓として肝・心・脾・肺・腎、陽の臓(腑)として胆・小腸・胃・大腸・膀胱に分けております。西洋医学と同じ名称もありますが、概念は一部共通のところもありますが、異なったものです。
漢方から見ると、脾と腎が弱く、また皮膚との関連が強い肺も、それからその肺との関連のある大腸にも異常がある人が多いようです。それはアトピー性皮膚炎の人は便秘症が多いことからもうかがえます。
漢方の腎は先天的なエネルーギー源を貯蔵している物と考えられ、昨今の環境の悪さから、両親自身の虚弱さ、胎児の際の母親からのエネルギー供給の少なさによるものです。環境とは、大気・飲食物・乗り物・電磁波つまり文明がもたらした物も含みます。胎児にとっては羊水・母親からの血液リンパ液です。母体を通してくる音・電磁波も環境の一つです。大気は排気ガスで汚れダイオキシンによる悪影響も進んでいます。食物も化学物質・ホルモン剤がはいっており、自然界全体が汚染されてきています。ダイオキシン・DDT・ビスフェノールは環境ホルモンと言われ、性ホルモンとして体内で働き雌雄の性別に混乱が生じてきています。そのような悪い環境の中で健康的に生きて行くことは大変です。
漢方では体の構成要素を大きくは陰・陽に、もう少し細かくは気・血・水・精に分けて考えています。
悪い環境の中では内臓の機能の失調から、それらの各構成要素がバランスを欠いていきます。気血の損耗が進むと虚火が生じ(陰気不足が原因),水の布散の障害から内湿を生じます(陽気不足が原因)。体の中には湿熱が異常に多くなり、皮膚の内側から突き上げるような痒みが生じます。
掻くことにより痒みは増し、皮膚は傷つき、リンパ液や血が出てくる状態になります。さらに状態が進むと、陰の消耗が進み皮膚はかさかさになり、粉をふく落屑の状態になります。
ステロイドを用いると、皮膚の状態は改善されますが、次第に効かなくなってきます。そのため、より強いステロイドを使うことになります。これを漢方から見ると、ステロイドは壮陽剤と考えられ、陽気を鼓舞することにより、過剰な湿を取り除き、皮膚の状態が改善されるものです。ただ無理矢理陽気を鼓舞したため、陰分の損耗激しく、熱はさらに過剰になっていきます。ステロイドの弊害です。さらに強いステロイドを用いると、このアンバランスの状態はひどくなって行きます。一旦ステロイドを用いると、ステロイドから離脱できない原理です。
では、漢方ではアトピー性皮膚炎を治癒または改善できるでしょうか。
漢方ではアトピー性皮膚炎の病理を湿熱が過剰に体内に溜まっており、このアンバランスを取ってやること、それから弱っている内臓を補強し、悪環境に打ち勝つ力をつけてやることにより改善できるものです。同じアトピー性皮膚炎と言えども、それぞれの体質には違いがあり、湿熱の度合いも異なることから、個人個人によって処方も異なってきます。
薬局で作れる漢方製剤は194処方あり、その一つの処方またはそれらの組み合わせにより対処することが可能です。その人の現在の状況体質は、漢方では観ること・声等を聞くこと・さまざまなことを質問すること・触れることにより、さまざまな病態に関する情報を得ることができます。その中で、食欲・便通・小便等さまざまな自覚症状を質問すること・舌の状態を観察すること・脈を取ることが重要です。
お疲れさまです。出来るだけ分かりやすく心がけたつもりですが、少し漢方の用語が多くなり、分かりにくかったかもしれません。少しでもアトピー性皮膚炎と漢方・体質との関係が分かっていただければ幸いです。
アトピー性皮膚炎は漢方的に見ても、難しい部類に入りますし、夢のごとくに直ちに治るものではありません。しかし体質は漢方薬を適切に服用することにより、変えることができます。時間はかかりますが、アトピー性皮膚炎も漢方だけで改善できる場合が多いものです。個人個人によって異なりますが、数ヶ月から数年はかかると思います。
 


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